フレンシア青葉台 木造ハイブリッド構造賃貸マンション

相互住宅株式会社が手掛ける賃貸マンションシリーズ「フレンシア」の最新作「フレンシア青葉台」が2024年1月に竣工しました。シリーズ初となるRCと木造のハイブリッド構造を採用し、住戸に設けられた「WOOD-BOX」をはじめ、外観や共用部への木質化など木を用いた見どころが盛りだくさんの物件です。
今回は相互住宅の友田さん、酒井さんと前田建設の設計者にお話を伺いました。


■インタビューにご協力いただいた方々
友田 奈見(ともだ なみ)さん
相互住宅株式会社 技術管理部 マネジャー
着工時から本PJの事業推進・品質管理を担当。前任者から、当社初の木造ハイブリッド構造ということで、木をさらに効果的に使用するよう引継ぎを受け、計画・仕様の変更等を推進。

酒井 陽菜(さかい はるな)さん
相互住宅株式会社 技術管理部
入社後、初のサブ担当として、フレンシア青葉台の基本設計~竣工までを担当。住戸間取りやカラースキームの検討他、PJのスケジュール及び品質管理を推進。

西森 匠(にしもり たくみ)さん
前田建設工業株式会社 建築設計第1部設計第1グループ アーキテクト
集合住宅、オフィス、工場、物流倉庫まで手がけるマルチロールの意匠設計者。

近藤 佑哉(こんどう ゆうや)さん
前田建設工業株式会社 建築設計第1部設計第1グループ アーキテクト
木造・混構造を中心に大学や多目的ホール、倉庫などを担当。木造プロフェッショナルを目指し、修行中。


(左から)近藤さん、友田さん、酒井さん、西森さん(以下敬称略)

①物件のコンセプトやこだわり

―フレンシア青葉台がどのように生まれたかを教えてください。

友田:今回の青葉台の敷地にはもともと第一生命のオフィスがありました。第一生命グループとしてこの土地をどう活用していくかという議論になった時に、青葉台が住宅地であることから相互住宅に話が来たのが最初のきっかけです。今回のフレンシア青葉台はシリーズの25棟目。第一生命グループとしてSDGsや環境貢献への想いもあり、初めて木造ハイブリッド構造の賃貸住宅を建てることを決めました。



―建物そのもののコンセプトやこだわりはありますか?

友田:まず、街並みに対して木をどのように綺麗に見せるかがひとつ。敷地は線路に面しており、駅も近く、電車から比較的ゆっくり建物が見えるので、フレンシアシリーズの認知度を高めるようなインパクトのある外観デザインを希望していました。

西森:相互住宅さんのご要望と土地の性格を考慮し「とまり木」というコンセプトで設計を進めました。内装・外装ともに木を使う方針は当初から決まっていましたが、デザインや建物の使い方は設計を進めていく中で変化しています。(図面見せる)大切にしたのは、入居者が木質化のメリットを感じられることと、外部に対して木質化デザインをアピールできること。この2つを成立させるように木造・木質化の範囲を検討しました。

友田:お客様が住みながら木質化部分のメンテナンスをどうするのか?という課題もあり、経年劣化への対応も含めてどこまで木を使うのかはかなり悩みました。軒裏は木を内側に寄せて、なるべく直接の雨がかりを避けるなど、前田建設さんにディテールを工夫していただきました。


―「とまり木」というコンセプトについてもう少し教えてください。

西森:内装や物件全体のテーマを何か言葉で捉えたいという思いから、木から連想される言葉を考えてご提案しました。相互住宅さんのオフィスに鳥のオブジェがあったことも「とまり木」のイメージソースのひとつです。また、共用部にファニチャーやベンチを設置したいとの要望があったので、せっかくならベンチも木で作りましょう、という話になりました。まさに「とまり木」のイメージですよね。

友田:フレンシアシリーズはエレベーターホールやエントランスに、待合せやちょっと休憩できるような場所を作りたいという思いで椅子を設置しています。安らぎを演出したいので木や布地など、柔らかい印象のファブリックを選ぶことが多いです。



―最初からWOOD-BOXはあったのでしょうか?

西森:当初から計画していましたが、最初は木材で仕上げるだけの想定でいました。しかし打合せを進める中で、ここは内外への木質化のアピールポイントになると考え、よりシンボリックな空間になるよう丁寧にデザインしています。

酒井:当初よりもWOOD-BOXの入り口をゲートっぽくしていただくなど、ディテールも工夫していただいたおかげで、完成した空間をみたときは想像以上に木の香りに包まれ、木にやさしく包み込まれるような感覚になり嬉しかったです。


②完成までのプロセスについて

―木を使う物件はこのフレンシア青葉台がはじめてだったかと思いますが、自分の思いをのせた部分などはありますか?

酒井:全住戸に木を使いたいという方針は前任者ともずっと話していたので、そこは受け継いでいきたいなと思っていました。あとは自分が初めて担当する物件でもあったので、カラースキームなども自分で直接素材を見ながら選定を行いました。

友田:私は着工後から参加したのですが、もっと「木」を増やしたいなと思い、西森さんや近藤さんに色々と相談しながら、インターホンの木パネルや階数表示などを着工後に追加していただきました。エントランスホールも当初より木の使用量を増やしていただき、さらに照明で木が照らされるようにするなど、木質化部分が最大限強調されるように変更していただきました。



―杉板の部分は神奈川県産材を使用したということですね。

酒井:神奈川県産材は流通の経路が限られるなど発注に制約があり、工期に合わせて材料を確保するために現場所長にはご苦労を掛けてしまいました。地産地消を進めるため、今後もその地域の木材を使用した物件を増やしていきたいと思っています。



―着工後も変更を加えたということでしたが、大変な部分もあったのではないですか?

友田:着工後のディテール検討や内装材の選定のときに、前田建設さんに模型を作っていただいたのですが、それが完成系をイメージしやすくて良かったです。

近藤:内装材やディテールを提案するときに、空間の形が図面だけだと分かりにくい部分があって。今回このWOOD-BOXが内観でも外観でも重要になってくる部分なので、そこの見え方やディテールも模型で確認することが出来たのは良かったと思います。

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③外観・内観デザインのポイント

WOOD-BOX

―外観・内観デザインのポイントを教えてください。

西森:内外ともに木質化をデザインに取り入れていますが、外観や共用部と専有部とでデザインイメージを切り替える意図があります。外観や共用部はどっしりと構えた木質化デザインで高級感を演出しつつ、住戸内に入ると木の優しい色合いが目に入ってくる。入居者にとって内と外のメリハリがあるデザインとしました。

友田:フレンシアシリーズは賃貸マンションですが、分譲マンションのような落ち着いた雰囲気を目指しています。外観や共用部は重厚感を持たせて、専有部は明るく清潔感のある室内にするのが基本コンセプトです。フレンシア青葉台も基本コンセプトに基づきつつ、どうしたら木が引き立つかをとても意識しました。

④WOOD-BOXについて

―WOOD-BOXの使い方はどのように想定されていたのですか?

友田:当初は在宅ワークするスペースとして考えていたのですが、出来上がってみるとここでヨガをやってもいいな、と様々なアイデアが浮かんできて…マルチスペースとしてご提案することにしました。ただ、WOOD-BOXの良さというのが直接見ていただかないと伝わらない部分も多くて、そこは少し課題に感じています。

近藤:今後、ここに住む方が様々な使い方を見つけていくのも面白いかもしれませんね。

⑤社内外の反応や今後について

―実際にご覧になった方の反応はいかがですか?

友田:エントランスに入ると木の香りがするところに驚いている方が多かったです。WOOD-BOXも非常に好評で、ここで過ごしてみたい!といったリアクションをもらえたのはとてもうれしかったですね。WOOD-BOXのある住戸は、途中で設計変更をしていただいて、居室面積を広くしました。25㎡台の住戸でありながら、居室部分で7.5畳前後確保でき、また天井高も高めに設定したことで居室が広く感じられ、多くの方から住みたいという反応をいただきました。

酒井:内覧会の際には、木質化された壁に興味をもち、実際に触って木の感触を確かめている方が多くいらっしゃいました。室内に現わし仕上げになっている構造体の一部でもある木柱についても耐火被覆の仕組みやRC部分との接合方法など多くの質問や感想をいただきました。

西森:前田建設の社内でも、明確なコンセプトでつくる集合住宅は少ないため、フレンシア青葉台は注目度の高いプロジェクトでした。設計部内の年間表彰にも選ばれるなど、よい結果になったと思います。

⑥木材利用のビジョンや目指すところ

―今後の木材利用についてビジョンなどはお持ちですか?

友田:今回のフレンシア青葉台を通して、「木質化」がお客様に安らぎを与える付加価値になるのではないかと改めて感じました。今後の物件でも継続して採用していければと考えています。



―設計担当者としてはいかがですか?

西森:木造・木質化は担当者としては初めての経験だったので非常に勉強させていただきました。手探りではあったものの、現場所長の協力もあり、狙ったイメージを作れたと思います。木造・木質化は、内装制限など法的なハードルや維持管理の懸念など、考えるべきことは多くなりますが、他にない価値を創り出せる可能性を感じました。これからも木を使った建物を積極的につくっていきたいです。



―皆さん、この度はありがとうございました!