森林のはたらき、木の役割。持続可能な社会と森林の関係とは。
森林には地球温暖化の原因と言われるCO2(二酸化炭素)を吸収する働きがある、ということはよく知られています。それではその森林の木を伐り出し、木材として利用することは環境に良くないことなのでしょうか。
◆なぜ今、木を伐る必要があるのか。森の循環と利用について
現在の日本は人工林の森林蓄積(使うべき森林資源)が豊富にあり、これを使って次の木を植えるべき時期を迎えています。人工林の森林蓄積約35億㎥に対し、消費量は年間でおよそ2,400万㎥で自給率は40%程度。平成の半ばに1,600万㎥あまりまで落ち込んだ頃よりは、2010年の木促法施工以降徐々に増えてはいるものの、まだまだ多くの森林が利用できる段階にあり更新が必要であるにも関わらず、放置されている状態です。国産木材を積極的に活用し、森の循環を起こすことで健康な森林を持続させることが望ましいと言えます。
日本の森林蓄積の推移
◆森の働きとは。森林の多面的機能
森林には人々の生活と切り離せない様々な役割があります。CO2の吸収と酸素の供給が水を浄化したり蓄える働き、そして木材やキノコといった資源の供給、豊富な遺伝子を守る生物多様性の保全にも大きな役割を果たします。
CO2の吸収量は樹齢が若い木の方が高いということが分かっており、吸収量を最大化させるためには伐採と植林を行うことで定期的に森林を循環する必要があります。同時に、森には雨として降った水を地下や下流に急激に流さずに保水し、人間や他の生物が少しずつ利用できるようにしたり、土砂崩れを防いだりする機能もあります。これらの機能を十分に担うために、常に循環を行って健康な森を持続させる必要があります。
◆木が炭素を貯蓄する。木とCO2削減の関係
木は光合成を行うことで空気中のCO2を吸収し、有機物に変えます。二酸化炭素中の酸素を放出し炭素を体内に溜め込むため、木は炭素の貯蔵庫とも呼ばれます。伐り出されて木材になっても炭素は木に閉じ込められたまま。木材の重量の実に約半分を炭素が占めています。他構造と比べた時にも、木造は製造時の炭素放出量が少ないうえに、完成後により多くの炭素を貯蔵するためカーボンニュートラルの実現に大きく貢献すると言えます。
国土の約7割を森林が占める日本。豊かな森林を資源として活用していくため、積極的に国産材を使っていきたいものです。一方で、林業人口の減少で維持管理されている森林が少ないのも事実。国の補助金なども活用しながら国産材の利用を広げ、日本の林業の再興を促すことが、理想的な森林資源の活用に繋がり、ひいては持続可能な社会の実現に不可欠ではないでしょうか。