第五話:自然共生社会の実現に向けて/森の循環がまちとつながる ~私たちにできること
ひやま先生は駅前の工事現場のビルが木を使って建てられているのを知って驚きました。こんなに大きな建物を木で建てて壊れないのかな?と疑問を持ったようです。そこで、お父さんに聞いてみることにしました。 今、駅前で、工事をしている大きなビル、木を使って建ててるみたいなんだけど、お父さん知ってる? ああ、看板に木造9階建てって書いてあったね。 あんなに大きな建物も木造でつくれるんだね。木造って戸建ての住宅や二階建ての事務所ぐらいしか建てられないと思ってた。ほら、去年お父さんの木で建てた、たてきくんのところみたいな。 実は、以前は学校や役場といった比較的大きな建物も木造で作られていたんだよ。もっと古いものを考えるとお寺やお城なんかも木造だったことは知ってるよね。ところが、戦後コンクリートや鉄といった材料が普及して木造は地震や台風、火事といった災害に弱いという理由で、住宅や比較的小さな建物以外あんまり使われなくなったんだよ。 関連記事はこちら→ そっか、だから私のイメージが戸建て住宅や小さな建物だったんだね。 しかし近年、戦後植えた木が育ってきてこれまでたまきに話した様な山のチカラをより発揮させるためにも、積極的に木を使ってまた植えるという循環を生む流れになってきてるんだよ。 なるほど。確かに、山を元気にするために木を使うのはいいけど、コンクリートや鉄みたいに強くないんじゃないの? いやいや。建物を建てるために守らなきゃいけない建築基準法っていうルールがあるんだけど、これはどの材料でつくっても同じ基準なんだ。 じゃあ木で建てた建物も同じ強さがあるってこと? そうだね。さっき言ったように、以前は木造の建物は災害に弱いところもあったんだけど、今では同じぐらいの強さで建てられるように技術開発が盛んに行われているんだ。そして、それは今も続けられているんだよ。 なるほど、ってことは、駅前のあのビルにもきっとその新しい技術が使われているのね。じゃあ木造の学校も増えてきてる? ああ、増えてきてるよ。学校は未来を担う子供たちが日常を過ごすところだから、そこに木を使っていることでいろんな学びにつながるんじゃないかな。 たとえばどんなこと?山のチカラのことや、生物多様な生き物のすみかとか? そうだね。木でできた建物を見て山のことを思いめぐらせることができるようになるなんて素晴らしいね。それに木が持つ特徴は学ぶ場、生活の場としてとても快適な空間をつくることができるんだ。 どういうこと?もっと聞かせて。 いいよ。木にはそれぞれににおいがあって、その多くはリラックス効果や殺菌効果があるんだ。それに雑音を適度に吸収してくれて空間のざわつきをおさえたり、紫外線を反射しにくいから目が疲れにくい効果もあるんだよ。 そうなんだ。いいことがいっぱいあるのね。 ただ騒音や水を遮るにはコツがいるから、そこは建ててくれる人とよく相談した方がいいよ。ところでなんで木の学校なんだい? 実は今日、職員会議で校長先生から学校を建て替えるという話があったのよ。それも木造で。 ほー、それはすごいニュースだね。たまきは先生として子供たちと一緒にいろいろ考えることができるんじゃないか? そうだね。お父さんに聞いた話をしながら、建てる途中から子どもたちといっぱい山や森、木のことについて考える時間を持つようにしようかな。 それはとてもいいね。 そういえば、校長先生がこうも言ってたよ。なるべく地域の木を使いたいって。 おっ、じゃあ私のところの木も使ってもらえるかな!? 森の循環がまちとつながる 自然共生社会の実現に向けて~私たちにできること~ ■イラスト協力 座二郎(ざじろう) 1974年 東京都生まれ




第8回 「木造建築物の法改正は?」| 建築基準法再発見! | 木で建ててみよう | 前田建設×木 記事
今なぜ木造?戦後と建築基準法|シリーズ第1回 | 木で建ててみよう | 前田建設×木 記事



















国土の3分の2以上が森林でおおわれているこの国では、そこから生まれる自然の恵みが生態系の根幹となり、まちに暮らす私たちの生活を支えてくれています。森が健全で持続可能であることが、次の世代により良い暮らしや環境をつないでいくために不可欠なのです。
最近では、ひやま先生が駅前で見たような大きな木造の建物を皆さんも見かけることがあるのではないでしょうか。第4話のお話に出てきた戦後の拡大造林で植えられた木が伐採期を迎え、建材として使いやすい時期に差し掛かった2010年、『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(木促法)』が施行されました。これはまさに、木材利用をエンジンとして、森林の健全な循環を持続的に回すためのルールづくりでした。そこから15年、桧山さんが話していたように様々な関係者による技術開発や法律の改正などが行われ、今では大規模な建物も木造で建てられることが増えてきました。
森とまちとの距離は遠いところもありますが、ぜひこの話を通して、私たちの暮らしと森がつながっていて、積極的な木材の活用が森を健全にするエンジンとなっていることをたまに思い出していただけたら幸いです。
桧山さんとひやま先生のお話をここまでご覧いただきありがとうございました。約半世紀前の日本と今の日本では、社会の状況や人々の考え方や豊かさの基準にも大きな違いがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
特に、2015年のSDGs、パリ協定からのこの10年間の変化は目覚ましいものがあります。太陽光で自家発電する住宅や蓄電池にもなる電気自動車、AIを搭載した省エネルギーの電化製品、資材を再利用した建材など、その製品の製造や使用において地球に負担が少ないことを付加価値として売りにしているものが増えてきているようです。つまり、以前に比べて環境問題が身近になり、その価値を商品選択の判断材料に組み込むことが増えているといえるでしょう。そしてさらにこれからの社会では、炭素中立、自然再興、循環経済に深くかかわり、なおかつ相乗効果をもたらす商品や活動が、より付加価値が高いと判断され、選択される世の中になるかもしれません。
どうか皆様、think global, act local、地球規模で考えて足元から行動しましょう。一人一人の行動変容が次の世代に豊かな地球を残すためのチカラとなることを信じて。
桧山さんのお話は、ひとまずこれでおしまいです。最後までお読みいただきありがとうございました。
2000年 早稲田大学理工学研究科建築学専攻修士課程修了
2000年~21年 前田建設設計部。通勤電車の中で漫画を描き始める。
2021年 独立。描く建築家。
https://zajirogh.wixsite.com/zajirogh
