若葉の季節5月。新緑とは何だろう

新緑の季節、山や森の緑がみずみずしく感じられます。登山やハイキングに行かなくても、街路樹の色合いの鮮やかさに季節の変化を感じている方も多いのではないでしょうか。改めて考えると、なぜこの時期に木々は「新緑」になるのでしょうか。木が新緑する理由や、仕組みを調べてみました。

新緑とは何か。新しい葉をつける理由。


新緑とは一般的に4~5月ごろの若葉の緑色や、木々が芽吹く現象そのものを指した言葉です。冬の間すべての葉を落としていた落葉樹が、暖かく日差しの強い季節に備え一斉に葉をつけ始めます。

落葉樹と同じく、冬の間も葉を茂らせている常緑樹も春から夏にかけて新しい葉をつけます。クスノキなどの常緑広葉樹やマツなどの針葉樹でも、よく見るとこずえなどに新しく明るい緑色の葉をつけているのがわかります。

光合成をしてエネルギーを作り出すのが葉の役割ですが、葉を作り維持するのにもエネルギーが必要です。その為、日光が少なかったり気温が低かったりなど条件が悪いと、作り出すエネルギーよりも使うエネルギーが上回ってしまいます。1年の中で気候の差が大きい地域で、冬場は葉を落とし、春から夏にかけての光合成に適した時期だけ葉をつけるのが落葉する木々の戦略です。

落葉樹には秋に紅葉の美しいカエデ、白神山地で有名な東北のブナやミズナラ、里山の雑木林でドングリをつけるクヌギ・コナラなどがあります。4月後半~北海道や東北では6月までと、新緑の季節は気温や標高によって違いますが、それぞれの土地での春と夏の変わり目に、山や森全体が鮮やかな色合いに変わります。

落葉と新緑


光合成は、葉の中にある葉緑体という器官で行われています。木は必要のなくなった葉を落とす際、そのまま葉を落とす訳ではありません。葉緑体を分解してミネラルなどの栄養分へと分解し、枝や幹へと戻してから葉を落とします。
その過程で葉緑体の主要な機能を担うクロロフィルという緑色の色素が優先的に分解されます。緑色の色素が分解されて無くなり、黄色の色素が残ったり赤色の色素が作り出されたりすることで、黄葉や紅葉が起こります。

新しい葉をつける際は、逆に枝や幹から葉に栄養分が供給され葉緑体が形成されていきます。若い葉はクロロフィルの量が少なく、緑色が薄いので透明感があり鮮やかに見えます。


日を追うごとに日差しが強くなり、気温が高くなっていく新緑の季節。大地に根を張って移動できないからこそ季節の変化に巧みに適応している木の生き方に、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

用語解説

クロロフィル

光合成で中心的な役割を果たす、葉緑体に含まれる緑色の色素。葉緑素とも呼ばれる。