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梅雨とは何か?梅雨と山、梅雨と森。

2019-06-13
うさぎ

6月、梅雨の季節がやってきました。雨の日や湿度の高い日が続き、木材にとっては大敵ともいえる季節です。

木造建築の湿気対策とは。腐朽にもシロアリにも負けない、木材保存技術

外に出るのも少し気が進まなくなるこの時期。洗濯物も、なかなか乾かなくて困ります。
そんな梅雨の時期ですが、農林水産業にとっては恵みの雨とも呼ばれる欠かせない季節でもあります。梅雨前線の発生メカニズムという視点で見ると、地球の中での日本の位置を意識させられる、ダイナミックな現象だとも言えます。

少し梅雨について知ることで、梅雨をありのままに受け入れられるようになる気がしませんか?

■梅雨とは何か?定義と仕組み

何気なく使っている梅雨という言葉、正確にはどのように定義されるのでしょう。気象庁によると、「春から夏に移行する過程で、その前後の時期と比べて雨が多くなり、日照が少なくなる季節現象」と定義されています。
簡単に言うと梅雨前線によって引き起こされる長雨ということになります。

気象庁|過去の梅雨入りと梅雨明け

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■梅雨の仕組み

では梅雨前線とは何でしょうか?
梅雨前線は、オホーツク海に発達したオホーツク海気団の冷たい空気と、太平洋に発達した太平洋高気圧(または小笠原気団)の暖かい空気の境目に発生する停滞前線のことです。

日常生活を送る上では、冷たい空気(冬から春の空気)と暖かくて湿った空気(夏の空気)の境目に雲ができ雨を降らせている、と大枠の理解さえあれば、十分に梅雨のことを知っていると言えるのではないでしょうか。

梅雨の間は押し合って均衡している2種類の空気。夏の空気の勢いが強くなって前線が北へ追いやられると本格的な夏の到来です。梅雨が明けたら一気に気温が上がり、蒸し暑くなるのも納得がいきますね。

詳しいメカニズムは、「梅雨」のウィキペディア"メカニズムと経過"の項にとても具体的に説明されています。

梅雨 - Wikipedia

スケールが大きくて、物語のように面白い内容です。興味のある方は是非、ご一読されることをお勧めします。

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■梅雨のある国

日本だけでなく、中国、台湾、韓国なども同じ梅雨前線の影響で梅雨になります。雨の多い「雨季」と雨の少ない「乾季」のある国、地域はたくさんあるようですが、四季があり春と夏の間に梅雨がある地域は、日本と周辺地域に限られています。

南半球の日本とちょうど同緯度付近にあるニュージーランドには梅雨はないそうです。南北を大陸と海に挟まれている、日本周辺ならではの気候だということがわかります。

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■梅の雨?梅雨の語源

梅に雨と書いて梅雨、改めて考えてみると不思議です。梅雨の語源には諸説あるようです。

中国でも梅雨のことを「梅雨(メイユー)」と呼ぶことから、漢字の語源は中国にあることがわかります。梅の実がなるころの雨という意味で呼ばれたという説と、黴が生えやすい時期であることから「黴雨(ばいう)」と呼ばれており、後から漢字が変わったという説があるそうです。

日本で「つゆ」と呼ばれるようになった由来は、「露」から来ているという説や、梅の実が潰れる時期であることから「潰ゆ(つゆ)」と呼ぶようになったという説など、諸説あり定まっていないようです。

中国から梅雨という言葉が入ってくる以前は、「五月雨」と呼ばれていました。梅雨の容赦ない雨の連続のイメージから、仕事の場面でも使われる、「五月雨式」という言葉も生まれたのでしょうか。

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■今年の梅雨はいつからいつまで?梅雨入りと梅雨明け

気象庁では、前後数日間の天気経過と予報を比較し、晴天から雨天へ移り変わる中間の日を「梅雨入り」として梅雨入り宣言をします。

梅雨前線は行ったり来たりすることもあり境目がはっきりしないため明確な基準はなく、様々な観測情報や予報によって総合的に判断されて梅雨入りが宣言されているようです。
梅雨入りや梅雨明けが明確に宣言されない年があるのも、うなずけます。

■梅雨と山、梅雨と森。梅雨の役割

梅雨は農業、特に稲の栽培にとって重要です。この時期にまとまった雨が降るからこそ、水田に水を張ることができます。田植え直後の稲の成長を促す恵みの雨と言えます。

また森の木々にとっても梅雨の雨は重要です。4月から5月の新緑の季節、木はたくさんの新しい葉をつけます。葉を作るためにはそれだけの養分が必要なので、実は新緑の季節の直後、木は養分不足になっています。梅雨の雨は木が土の中の養分をたくさん吸収したり、光合成による有機物の合成を促進したりします。新しく葉をつけた木々にとっては、待ちに待った雨という訳です。

若葉の季節5月。新緑とは何だろう

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実は梅雨の影響は陸上だけに留まりません。梅雨の時期に降る雨は山や田畑を経て川に流れ込み、海へと注がれます。この時期、冬の間地上に蓄積された有機物が気温の上昇とともに分解されるため、土壌は養分豊富な状態。その豊かな養分が、海へと流れ込みます。
一方、海の中は気温の上昇とともに海水面が暖められ、水面近くと海底の海水がかき混ぜられなくなり、海底の栄養が水面にいるプランクトンに届かない状態になりつつあります。梅雨の雨によって海に運ばれた養分は、魚などのえさとなるプランクトンにとって貴重な栄養源となります。

豊かな森が豊かな海をつくる。山と海の関係

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今回は梅雨について様々な視点から調べ、考えてみました。雨が多くて嫌な季節、という印象が少し変わったような気がしませんか。雨が降った日には、梅雨前線の動きや雨によって豊かに育つ木々の様子を思い浮かべてみるのはいかがでしょう。いずれにしても、雨に悩まされることに変わりはないのですが...。