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今なぜ木造?高度経済成長期と新工法|シリーズ第2回

2021-10-11
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©SAKAMOTO IKUKO


◆第二世代(1970年代)
 シリーズ第2回となる今回は前回の第一世代(~1960年代)に引き続き、下表の第二世代(1970年代)について振り返っていきたいと思います。


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 シリーズ第1回で振り返った1960年代までの戦後の日本の木材不足や貿易自由化等により1970年代になると多くの外材が日本に輸入されるようになります。その外材の中でも特に有名なものが主としてアメリカやカナダなどからの輸入木材であるツーバイフォー材です。これを使用したアメリカやカナダなどで主流のツーバイフォー工法は日本では枠組壁工法と呼ばれます。
 いまでこそよく使われる工法ですが、この工法はプレハブ住宅(工業化住宅)と同じく一般的な工法としては当時は認められておらず、建築基準法に基づく特認が必要とされていました。しかし、第一次オイルショックの翌1974年、当時の建設省は「枠組壁工法技術基準」を告示し、これにより、一定の基準を満たせば伝統的な木造軸組工法(在来工法)と同様に特認なしで建設することができるようになりました。いわゆるオープン化です。また、1976年には、同工法の啓蒙普及、技術開発の推進などを目的に社団法人日本ツーバイフォー建築協会が設立され、住宅工法の多様化の時代が始まりました。

 このような背景の元、耐震・耐火性、気密性に優れた特徴を持つツーバイフォー住宅は洋風の多彩な外観デザインをアレンジすることなどで着実に供給戸数を伸ばしていきます。オープン化から10年後には2万戸ラインを突破、「住宅着工統計(国土交通省)」で単独のジャンルに集計され始めた1988年には6万戸ラインを超えています。2016年度には13万戸を突破して、その躍進ぶりが目立っています。この理由として、1995年に発生した阪神淡路大震災の際に、同工法の住宅の被害がきわめて小さかったことなどが挙げられ、耐震・耐火性の良さが広く認識された経緯があります。

iStock-464999245.jpg  また、このような住宅への木材使用の裏で、1970年の大阪万博と共に高度経済成長期に突入し、1970年代後半になると建設費の大きい鉄筋コンクリート造の大規模建築物が盛んに建設されるようになり、住宅以外の建物の鉄筋コンクリート造化に一気に拍車が掛かり、1970年代後半以降は「コンクリートブーム」に突入していくことになります。これに伴い、鉄筋コンクリート造の技術は大きく向上していくことになりましたが、住宅以外の日本の木造技術の向上速度は低下していくことになりました。

 同時に、この時代は地球温暖化問題の走りの時代ともされ、科学の進歩に伴い、地球の⼤気のしくみについて理解が進み、地球温暖化が深刻な問題として、科学者の間でも注⽬されるようになりました。しかし、この問題に対する危機感が国際的に広まり始めたのはもう少し後の1980年代の後半になってからになります。
 これらの問題は前進はありつつも1970年から約50年経過した現在も完全には解決しておらず、今でこそSDGsやカーボンニュートラル等、声高に叫ばれ、社会の注目を集めていますが、大事なことはそこでただ傍観し終わるのではなく、次の世代にこの問題を残さないという強い意志を持ち、行動を起こすことだと感じています。向こう50年、同じことを繰り返さない為に、一人一人が今できることとは何かを考え、行動すること、その積み重ねが未来の問題解決にきっとつながるはずです。


次回は第三世代(1980年代)以降を一緒に振り返っていきたいと思います。



■イラスト協力
さかもといくこ

絵本作家・イラストレーター・看護師
青森県八戸市生まれ。絵本創作を中心に、イラスト、アクセサリー制作も行っている。
代表作品に、「タベールだんしゃく」シリーズ4作品(ひさかたチャイルド、チャイルド本社)がある。
弊社のサイトに込めた想いにご賛同いただき、今回のシリーズ『今なぜ木造建築なのか?』のイラストの作成にご協力いただいています。
http://ikuko.sakamoto.mobi