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第三世代(1980年代)『今なぜ木造建築なのか?』|シリーズ 第3回

2021-11-15
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©SAKAMOTO IKUKO


◆第三世代(1980年代)
 シリーズ第3回となる今回は前回の第二世代(1970年代)に引き続き、下表の第三世代(1980年代)について振り返っていきたいと思います。


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 1980年代は1950年代後半から1970年代にかけて起こった法令上の防火の規制強化、集成材を用いた学校建築への補助金打切りなどにより住宅以外の木造建築棟数は激減していくことになり、全国の新築木造住宅着工戸数、木造率も1960年以降から現代にかけて過去最低の年代となりました。しかし、1986年の大断面構造用集成材 (断面の最小径15cm、かつ 断面積300cm2以上)のJASの制定や1987年の建築基準法改正により、集成材が再び脚光を浴びるようになり、木造建築復権の兆しが見え始めたのがこの世代の特徴です。

 1987年の基準法改正の具体的な内容としては、
 ・大断面集成材を梁、柱などの主要構造部に用いた場合、これまでの高さ制限が解除され、最高高さ13mを超える
  大規模建築物を造ることが可能となったこと
 ・大断面集成材による木造建築物の特例規定として燃えしろ設計が新設され、柱、梁を木造あらわしとするこ
  とが可能になったこと
 が挙げられます。

 このような法改正に一番敏感なのは、やはり基準法を扱う建築関係者であり、その中でも建築家が大断面構造用集成材に興味を持ち始め、ドームやアーチなどの木造大規模建築物に挑戦を行ったことが、木造建築復権に一役買ったのではないかと考えています。例えば、葉祥栄による「小国ドーム」などが例として挙げられます。ご興味のある方は是非検索してみてください。この時代にこんな大空間を既に木造で実現していたことに驚きを覚えると思います。このように当時の建築関係者に大きな影響を与え、木造建築復権につながった1987年の法改正は現在の木造ブームの礎となった画期的な法改正であり、歴史のバトンが現代にしっかりとつながっていると感じられます。


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 一方、1980年代の地球温暖化問題は、このような木造建築復権と呼応するかのように、国際的な危機感が広まりを見せました。その危機感の始まりとなったのが1985年にオーストリアで開催された科学者による地球温暖化に関する初めての国際会議であったフィラハ会議です。この後も現代にかけてこの問題への取り組みは国際的に加速していくことになります。

 木は炭素の貯蔵庫と言われるくらい炭素を固定している物質であり、木造はコンクリート造よりも建設時のCO2の排出量を抑えられる為、「木を使う=木造建築を建築する」ことで地球温暖化問題解決に貢献できます。こういった内容は今でこそやっと一般的に知られるようになり始めましたところですが、当時としては木造建築と地球温暖化問題との関係が大きく取り上げられることはありませんでした。

 このように木造建築復権と地球温暖化問題の関心の高まりが1980年代という同一世代で起こっていたことは偶然だったかもしれませんが、運命的なものも感じられ、はっとさせられた方もいるのではないかと思います。『今なぜ木造建築なのか?』様々ある答えの1つに繋がるヒントとして地球温暖化問題というキーワードが見えてきたのではないでしょうか。


次回は第四世代(1990年代)以降を一緒に振り返っていきたいと思います。



■イラスト協力
さかもといくこ

絵本作家・イラストレーター・看護師
青森県八戸市生まれ。絵本創作を中心に、イラスト、アクセサリー制作も行っている。
代表作品に、「タベールだんしゃく」シリーズ4作品(ひさかたチャイルド、チャイルド本社)がある。
弊社のサイトに込めた想いにご賛同いただき、今回のシリーズ『今なぜ木造建築なのか?』のイラストの作成にご協力いただいています。
http://ikuko.sakamoto.mobi