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【木材利用促進月間】「経年変化」~凹凸のある木材、灰色の木材どちらがお好き?~

2022-10-26

毎年10月は「木材利用促進月間」です。 若い世代や木材利用に関心の薄い層にもウッド・チェンジにつながる具体的行動を促進するため、木を取り入れたライフスタイルの価値を効果的に発信するとともに、SDGsの視点及び人や社会・環境に配慮した消費行動「倫理的消費(エシカル消費)」の普及啓発の取組を前田建設でも行ってまいります。
木材利用促進月間(旧木づかい推進月間)-林野庁

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町を歩いていると、このような灰色をした、凹凸のある木材を見かけたことはありませんか。 屋外に使われている木材のほとんどがこのような灰色の見た目をしていますから、もしかするとこの見た目こそ木材らしいと感じる人もいらっしゃるかもしれません。


屋外で暴露された木材

「屋外で暴露された木材」

京都大学生存圏研究所 居住圏環境共生分野教授 今村祐嗣 研究トピックスより



しかしこれは木材本来の見た目ではなく、紫外線やカビに侵されたあとのいわば「不健全な木材」といえるのです。


■木材の「耐候性能」について

木材の性能を表す重要な指標として、強度性能、耐腐朽性能、耐火性能の他に「耐候性能」という項目があります。木材という材料は、木が本来身にまとっていた「樹皮」を全て剥ぎ取り、丸裸にした状態で使いますので、屋外に出せば紫外線、雨、菌および風など様々な外的要因に侵され、最終的に侵食され凹凸化します。この現象は「風化」とも呼ばれます。


木材劣化の流れ1.png

sick_samuke.png 私たち人間も、雨風の強い日に服を着ないで外に出れば風邪をひきますよね。木も同様に裸のままで外に出れば不健康になります。同じ生き物としての視点に立てばある意味当然です。
しかし近年、美しい模様(木目)を多くの人々に見せられるように、屋外で木材を使いたいというニーズが広がりつつあります。では、そのような使い方をするためには、耐候性能の観点からどのように対策を打つべきなのか。いくつかの方法を本記事にてご紹介いたします。

■耐候性能を考慮した木材の活用方法

①「木材保護塗料」を塗る

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保護塗料塗布の様子

服が無いのなら、着せてやればいいのです。
含浸タイプ、造膜など木材保護塗料には様々な物があり、木材に表面に塗布を行うことで樹皮と同じようにカビ類や紫外線などから木材を守る役割を果たしてくれます。(厳密にはJASS 18 M 307の性能規格を満たした、防腐、防カビ、防虫効果を有する薬剤を含むことを特徴とする既調合の半透明塗料のみを「木材保護塗料」と呼びます。)
注意すべき点は、どの塗料でも「塗り替え」が必要なことです。木自体の変形や風雨、紫外線で塗料も剥がれていきます。定期的な塗り替え(一般的に竣工後2~3年、その後5~6年)を重ねることで、より継続的な効果が期待できます。



②「改質木材」を使用する

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加圧注入用木材保存剤 - 株式会社ザイエンス (xyence.co.jp)

服が無いのなら、肉体そのものを強化してやればいいのです。
樹脂を内部まで含浸させる、または熱処理を行うなど、様々な方法で木材自体の性能を強化した「改質木材」があります。塗料に比べてより耐用年数が長いもの(10年~30年まで)が多く、メンテナンスフリーを謳う(うたう)改質木材もあります。
ただ、これらは近年開発された技術であるものが多く、実際に使用する際には何らかの事前検討(予備試験)等が必要であると考えられます。



③屋外には使用しない

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服が無いのなら、外に出さなければ良いのです。
なんだ、解決になっていないじゃないかと思われるかもしれませんが、屋内で使用する木材は、屋外のように雨風や紫外線、生物汚染にさらされる可能性が限りなく低いので、木目そのものの見た目や、木本来の手触りを活かしたデザインが可能となります。
ただ、屋内においても空調の風による乾燥や空気中のホコリなど外的要因はありますので、定期点検や拭き掃除など日々のメンテナンスは必須となります。

■まとめ

木材は生き物だからこそ、非常に手のかかることが多い材料だと言えます。しかしながら、生き物としての特性を理解しポテンシャル(潜在能力)を見出すことで、我々の想像を超える魅力が生まれる材料です。 今後、木材がより多くの用途で活躍できるような技術が発展することを願っています。