森のソーシャル・ディスタンス ~木も気を使ってる?~

新型コロナウィルス感染症対策として、「ソーシャルディスタンシング」が新しい生活様式のひとつとなってきました。人間にとっては新しい生活様式ですが、「ソーシャルディスタンシング」をはるか昔から実践してきた木があります。100年ほど前に科学者たちがそれに気づき、それ以来研究が続けられてきました。

森のソーシャル・ディスタンス~木も気を使ってる?~

英語でCrown Shyness(クラウンシャイネス)と呼ばれる現象です。直訳すると「恥ずかしがり屋な樹冠」。Crownとは「樹冠」※1という樹木の枝や葉っぱの部分のことで、この樹冠が集まって林冠(Canopy)※2を形成します。森林浴をした際に、林冠を見上げると木が隣の木に気を使って綺麗に空間を開け、keep distance(キープディスタンス)をしているようですね。まるで内気な木同士が遠慮し合っているようです。


森のソーシャル・ディスタンス~木も気を使ってる?~

クラウンシャイネスの原因はいくつかあるようです。その一つとして風によって隣同士の木の枝が当たりお互いに傷つけ合ってしまうことがあげられます。何度も隣の枝から傷つけられたくないので、その木(枝)は当たる方向への成長をやめるのです。マングローブ※が風によって揺れるほど樹冠同士の空間が広くなったり、ロッジポールパイン※をお互いの枝がぶつからないようにしたりすると樹冠の間の空間が無くなった、という研究結果があります。この研究、楽しそうですよね。


なかには風によって傷つく前から、近くの木を避ける木もあります。葉っぱが隣の木から反射した遠赤色光を感知して、近くの木の存在を知り、その方向への成長をやめるのだそうです。近くの木から出る化学物質を検出できる木もあるそうですよ。


同じ樹種の木が隣にいることを感知した場合、自分の葉が陰になるように成長し(この場合はクラウンシャイネスにはなりません)、ご近所さんの迷惑にならないようにする樹種もあります。木も周りに気を使って生きているようですね。

いろいろな原因でクラウンシャイネスは起こりますが、それによって木同士が光を競い合わず、林床にも光が行き届き、森全体が健康になります。また、樹木同士で害虫や病気が移るのを防ぐ効果もあるようです。


森のソーシャル・ディスタンス~木も気を使ってる?~

そうです。森の中であれば我々も人間のソーシャルディスタンシングを実践できるので、今週末は森林浴ですね。30分森林浴するだけで、心とからだに良い効果が期待できるそうですよ。


参考文献


McVean, A. (2018, September 19).
Trees avoid touching each other due to "crown shyness." The results are beautiful webs of leaves. Office for Science and Society.
https://www.mcgill.ca/oss/article/did-you-know/trees-avoid-touching-each-other-due-crown-shyness-results-are-beautiful-webs-leaves

Wu, K. (2020, July 6).
Some trees may "social distance" to avoid disease. Nationalgeographic.com.
https://www.nationalgeographic.com/science/2020/07/tree-crown-shyness-forest-canopy/

用語解説

マングローブ

熱帯および亜熱帯地域の河口汽水域の塩性湿地にて植物群落や森林を形成する常緑の高木や低木の総称。

ロッジポールパイン

アメリカからカナダ西部に生息する二葉松。