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安心をつくる木造の建て方。木造建築の安全性と快適性

2018-04-26
安心をつくる木造の建て方。木造建築の安全性と快適性

木造建築を検討する際に「地震や火災など、もしものときに安全なのだろうか」という疑問がよぎるのではないでしょうか。

地震後の被災地の写真や映像などから、木造の建物が倒壊していたり損傷したりしていた記憶がある...材質として、鉄骨や鉄筋コンクリートに比べて燃えやすいのではないか...こういう印象を持っている方が多いかもしれません。しかし実際には、現在の法律を守って建てれば他の構造と同等の安全性を保つことができるのです。さらに材料の性質として、木材には鉄よりも耐火性能が高いという一面もあります。ですので、現行の設計基準をふまえた上で、木の特性を活かした設計を行えば「安全」に加えて「快適」も得られる建築空間が実現できるのです。

ここでは木造の安全性と、快適性を実現するために知っておきたい木材の性質についてご紹介します。

木造は他構造と同様の安全基準で建てられている

木造は他構造と同様の安全基準で建てられている

現在の建築基準法では、万が一災害が起こった際に建物内にいる人が安全に避難できるよう基準が定められています。

木造は他構造と同様の安全基準で建てられている

地震に対する安全性

建築基準法の耐震基準では、鉄筋コンクリート造、鉄骨造といった構造の種別に関わらず最低でも震度7程度(阪神淡路大震災、東日本大震災と同等の規模)で倒壊しないことが義務付けられています。そのため、最新の基準に即して設計された建物であれば構造に関わらず同等の安全性があると言えます。さらに庁舎や病院などの災害時に拠点となる施設は安全性の基準レベルが厳しく、倒壊しないだけでなく大地震後構造体を補修することなく使用できることを目標としなければいけません。例えば住田町庁舎のように耐震基準の厳しい建物でも、木造で建築することが可能なのです。

火災に対する安全性

建築基準法では構造の種別に関わらず安全に避難できることなどを考慮した耐火に関する基準が設けられており、材料の耐火性能を確保するための基準についても定められています。また木材の火に対する強さについて興味深いデータがあります。火にさらされ熱を加えられた時に、鉄は急激に強度が低下するのに対し、木は時間に比例して燃えるため、徐々に強度が低下するのです。木は火災で火が燃え移った際表面のみが先に「炭化」し、その部分が内部への酸素供給を遮断します。そのため、材の内部まで燃焼されるのに時間がかかり、より避難時間を確保することができるのです。

火災に対する安全性
火災に対する安全性


安全だけじゃない、木の居住空間の快適さづくり

安全だけじゃない、木の居住空間の快適さづくり

木造の安全性については、ご安心頂けたかと思います。次に気になるのが建てた後、生活したり利用をする際の快適さではないでしょうか。前田建設では建築現場でデータを採取、蓄積し、快適な木造建築を造るための研究開発を行っています。ここでは「音」と「温度」に関して少しご紹介します。

音環境の快適性

木は鉄筋コンクリート造に比べると音を遮る力が劣っています。その反面、音のざわつきを程よく吸収し過度な反射を防ぐという性質も持っています。このような性質を深く理解し、建物の計画に活かすことが快適な空間づくりの第一歩です。建築物の用途に合わせて工夫を施すことで、適切な遮音計画や音響計画を行うことができるのです。

音環境の快適性

温度環境の快適性

建物内部の快適さを左右する最大の要因は、「温度環境」ではないでしょうか。快適さだけでなく、冷暖房費にも関わる要素となります。

実験により木造の部屋は鉄筋コンクリート造の部屋に比べて全体が均一に温まることがわかっています。下の図をご覧ください。これは室温12℃の部屋を2時間ストーブで採暖したときの温度変化を示しています。木造の場合、室温・床・壁の温度差がほとんどありません。しかし、鉄筋コンクリート造では室温と床・壁に10℃近い温度差が生じています。つまり室温が高くても直接床に触れている足元が冷えることで、暖房していても体感温度は下がってしまうのです。

温度環境の快適性
温度環境の快適性

湿度環境の快適性

木には周辺の状況に合わせて湿気を放出・吸収して空間の湿度を一定に保つ性質もあります。空気が乾燥している冬季には湿気を放出、室内の乾燥を防ぐことでウィルスが繁殖しにくくなります。反対に室内に湿気が溜まりがちな梅雨の時期などは、木が湿気を吸収しカビの繁殖を抑える効果もあります。下図は、木材とビニールシートの内装と屋外環境(百葉箱)で湿度変化を比較したものです。木材の内装の場合、屋外の湿度に関わらず屋内の湿度が一定に 保たれていることがわかります。

湿度環境の快適性

最後に

このように木で建てることで安全性を保ちながら、快適な環境づくりを実現することができるのです。それにはいかに木材の特性を活かして快適な建築を実現するかがポイントです。木は生き物。鉄やコンクリートのような人工の素材にはない様々なあじわいを備えています。木のことを理解し、その良さを100%活かせるようなモノづくりをしていきたいものです。