木材の地産地消で地域経済を循環させる。その意外なメカニズム
地域の木を使って建物を建てる意味とは何でしょうか。昨今、「木材の地産地消」という考え方が少しずつ注目され始めています。 地産地消といえば、一般的には野菜や魚介類などでの取り組みを想像されるかもしれません。木材でも同じように、その地域の木材を使って建物を建てることを指します。製造や運搬におけるCO2(二酸化炭素)排出を抑える効果があるほか、その地域の温度や湿度などの気候条件に適した木材を使えるという利点もあります。 木材の地産地消の意味は、それだけではありません。国土の実に7割を森林が占める日本なのですが、林業は安価な輸入木材の流通や人材不足によって非常に厳しい状況に直面しています。木材の地産地消は、そんな日本の林業に新たな活力を与える取り組みとして期待されています。地域の木材を使うことがどのように林業や地域の活性化に繋がっていくのか。前田建設の活動を通してご紹介します。 岩手県大槌町。青森から宮城へつながる三陸海岸の中央付近に位置する漁業の町です。この大槌町の安渡という地区に2016年11月、大槌町安渡公民館が完成しました。災害時には避難ホールとしての活用もできる広さ、およそ1,600m2の大きな公民館。実際に建物に使用した木材のうち、90%が大槌町や岩手県産のものです。町産・県産の木材を利用し、構造体・内外装材・建具に至るまで「木のぬくもり」に包まれた空間をつくるというコンセプトのもと、設計・監理を株式会社アール・アイ・エー、施工を前田建設が行い実現しました。 地域の木材を利用することが、なぜ地域の活性化になるのでしょうか。 同じように、木材を地産地消することはその地域の森林を保全することにもつながります。現在、日本の人工林の多くが、維持管理が難しく手入れされずに放置されている状態です。木材として利用する際には十分に育った伐り時の木(樹齢50~60年ぐらい)を伐採しそこにまた新たに木を植えることで、森林が更新されます。木を植え、育て、伐採するというサイクルを循環させることは、林業の活性化に繋がるだけでなく、森林を健康に持続させることにもつながります。 このように木で建てることは森林の循環を促すきっかけとなります。「何を建てるか」に加えて「どうやって建てるか」が大切にされる時代なのかもしれません。 木で建てることは、地域の人材育成にもつながります。大規模木造建築物の建設には多くの地域プレイヤーが関わります。木造建築物ではゼネコンのみで事業を進めるのではなく、技術を持った地域の工務店や職人の方々と協力して建てることができます。その地域の方々に最新の木造建築技術が伝わり、その技術が地域や企業にとっての将来の糧となります。また木造建築物を使い続けるために不可欠なメンテナンスなどの過程も、地域の事業者が技術を発揮する機会になります。 木で建てることには、多くの手間や人手がかかります。建ててからの維持管理についても同様です。私たちは、それが「木で建てる」ことの良さであると考えます。木で建てることには地域社会との連携が大変重要で、それがおのずと地域経済や森林の循環に繋がっています。私たち前田建設は、「何を建てるか」だけではなく「どうやって建てるか」を大切に、これからも「木で建てる」について考え続けます。積極的に地域材を活用。岩手県大槌町安渡公民館
地域材の利用が地域の経済循環に貢献?
森を育て伐採し、木材を加工し、組み立てて建物にしていく過程には様々な人や企業が関わります。地域の木材を利用することで、林業から始まり木材加工業、運送業、建設業など地域の関係者の動きが生まれ地域経済が循環するのです。木で建てることにより、地域の人材を育成