第3回「ひなんあんぜん」~耐火建築物等その1~|建築基準法改正を(辛口で甘めに)斬る!

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 建築基準法における防火関連規制の考え方が大きく変わりました。
 昭和25年の制定当時は、防火規制においては「耐火建築物」が最強で、その次が「準耐火建築物」、そして耐火でも準耐火でもない「その他」と三択の区分でした。
 近年において、木材利用の推進や既存建築ストックの活用、そして設計の自由度をあげるために「耐火建築物」や「準耐火建築物」と同等の「耐火建築物等」や「準耐火建築物等」の基準がいろいろと設けられるようになりました。

 防火関連の規制には3つの切り口があります。

①火災時における大規模建築物の倒壊防止(法第21条)

②火災時における特殊建築物の在館者の避難安全(法第27条)

③火災時における防火地域・準防火地域の隣棟への延焼防止(法第61条)

 従前までは「耐火建築物」が、この3つ全てに対応できるものとして規定されていたのですが、3つ各々に求められる防火性能が異なるため、①②③の「耐火建築物『等』」は異なったものになり、各々の『等』の特性を表した用語としては、次の3つになりました。

①火災時倒壊防止建築物「とうかいぼうし」

②避難時倒壊防止建築物「ひなんあんぜん」

③市街地延焼防止建築物「えんしょうぼうし」

 このうち、②については平成27年6月1日に法改正施行済みでしたが、今回の法改正により①及び③が6月25日付けで施行され、これで3つの要素全てが出そろいました。
 この3つの建築物等と耐火建築物の包含関係は次の図のようになります。

 各々に防火基準が定められていますので、仕様規定(告示)で設計する方は大変です。
ややこしくて面倒くさいっていう方は、今までどおり全てに万能な「耐火建築物」なら間違いありません。

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 この中で、今回は「ひなんあんぜん」について見ていきましょう!

 法第27条は平成27年に改正施行済みでしたが、その際に「特定避難時間倒壊等防止建築物」として、「木3共(もくさんきょう)」と「木3学(もくさんがく)」が位置付けられました。なお、今回の改正で「特定避難時間倒壊等防止建築物」は「避難時倒壊防止建築物」と呼ぶようになりました。

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 現在は、耐火建築物等としてはこの2つだけですが、今後、「ひなんあんぜん」が確かめられるようになると他の特殊建築物でも認められるようになる可能性があります。
 でも、 「木3病」や「木3映」は避難が大変だから、可能性は薄いかな。

 なお、前回お話しした「しょうきぼとっけん(階数が3以下で延べ面積が200㎡未満)」については、この「ひなんあんぜん」の規制が大幅に緩和されています。

 規制については以上のとおりですが、近年の改正の流れで大きな特徴は、規制の内容ではなく、規制の内容を「法律」、「政令」、「告示」のどこで決めるかがポイントとなっています。
 今までの規制では、法律(法第27条)で即「耐火建築物としなければならない」と定められていましたが、改正により法律では「避難時倒壊防止建築物としなければならない」として、政令で避難時倒壊防止建築物の性能を規定し、告示で具体的な仕様を決めるようになりました。「木3共」や「木3学」の1時間準耐火構造は告示で定められています。

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 今まで「法律」で決めていたことが、今後は「告示」で決めるようになったということは、ランク的には2ランクダウンです。でも、「告示」で決められたことは大臣が改正できますので、「法律」の改正のように国会の議決は不要です。これで、今後の改正が容易になった。ということです。うまくやりましたね。

 次回お話しする「とうかいぼうし(火災時倒壊防止建築物)」や次々回の「えんしょうぼうし(市街地延焼防止建築物)」も具体的な仕様は告示で定められています。



建築基準法監修:株式会社確認サービス