今からでも間に合う「私たちにできること~生態系サービス~」
たてきくんとおばあちゃんのお話も回を重ねること4回となり、いろんな言葉が出てきました。そこで、これまでのお話のポイントを少し抜き出して、おばあちゃんの言っている「自然の恵み」について改めて振りかえりましょう。 「自然の恵み」は生物が多様だからこそ私たちが受けられる恵みのことで、人間目線の考え方ではありますが「生態系サービス」と呼ばれています。実は、この生態系サービスの恩恵をあえてお金に換算すると日本国内の価値だけでも年間70兆円にのぼり、そして計算できないものも加えるとそれをはるかに超える金額となるとてつもない恵みなのです。 ではここからは、これまで出てきたお話と照らし合わせながらそれぞれのサービスを改めて振り返ってみましょう。 ■「供給サービス」: これなあに? おくすり? シップみたいなにおいするけど... これか?これは昨日家で取れたミントでおばあちゃんがつくった虫よけ。夏は虫が多いからな。さあ、行こか。 関連記事はこちら→ 私たちの生活の様々な場所で食べ物や生活に欠かせない材料などが主に植物から作られます。また、マジックテープや新幹線の先端の形状のように植物や動物の生態から得られるヒントもバイオミミクリー(生物模倣)と言って、供給サービスの一つです。 ■「調整サービス」 もちろんや。もし土がカチカチで水がしみこまへんのに大雨が降ったらどうなると思う?すぐに洪水になったりするで。それに山にしみ込んだ水はゆっくりと土の中を通って地下できれいな水になって川に流れ出たりするんや。 すごいね。じゃあ、山はぼくたちの守り神だね。 関連記事はこちら→ 山の土壌が水を十分吸収でき、ゆっくりとろ過できる状況であれば、洪水や土砂災害などの抑制に大きく寄与します。この機能は私たちの生活を安全で快適なものにしてくれる非常に重要なものです。また、植物は光合成により空気中の二酸化炭素を吸収し体内に炭素をため込むため、木材などではその重量の約半分が炭素でできているのです。つまり、山で伐った木を使った建物は、空気中の二酸化炭素の中の炭素をため込み、伐った後に木を植えるとまた、新たに二酸化炭素を吸収するという自然と人間の良好な関係性が生み出す循環が、持続可能な調整サービスを支えることになるのです。日本は国土の約2/3が山です。まさに、たてきくんが言うように「山は私たちの守り神」といえるでしょう。 ■「文化的サービス」 お世話になってるものって何だろう?おばあちゃんがいつも言ってる自然の恵みと一緒かなあ? たてきくん、こっちにたくさんどんぐりあるで。一緒に拾おうや。まんまるのや細長いのやいろんなんがいっぱいあるで! 関連記事はこちら→ 日本は南北に長く四季折々、それぞれの地域に根付いた自然の表情を楽しめる国です。そのため、私たちの生活には古来より深くその自然がかかわってきたことは言うまでもありません。自然は食や遊び、お祭りなどの行事を華やかに、時に厳しく時に彩りを加えます。ここで出てきたドングリなどは秋の子供たちの楽しみの定番ですね。子供のころから自然の癒しや学びに触れることは、これからまずます重要となるネイチャーポジティブに向けた自然との共存を考える基盤となっていくでしょう。 ■「基盤サービス」 酸素は植物がはきだすんやけど、月にはその植物がないから酸素はできひんのや。 そっかー、植物ってなんかすごいんだね。 関連記事はこちら→ これまでご説明した生態系サービスを生み出すために欠かせない酸素や生物たちのつながりや関係性を支えるサービスを基盤サービスとよんでいます。 ■まとめ 生態系サービスは、「基盤サービス」を根幹に「供給サービス」「調整サービス」「文化的サービス」の4つで構成されていることをご理解いただけたでしょうか?「自然の恵み」である「生態系サービス」を持続可能にすることで私たちの生活は支えられます。この環境を次の世代が安心して暮らせるより良い形で残していくために、わたしたちにできることがいろいろとありそうです。
これまでご紹介したように生態系サービスは大きく4つにわけることができます。供給サービス、文化的サービス、調整サービスそしてそれらを支える基盤サービスの4つです。
生物多様性/種の多様性 ~私たちにできること~
そして忘れてはいけないのが、医療の世界でもこの自然の恵みは大活躍です。今回おばあちゃんがつくってくれたシップみたいなにおいがする虫よけは、ミントを使った虫よけ効果を狙った手作りのものでした。実際の医薬品でもその約半分が自然由来のものといわれているほど自然の恵みを活かしているのです。
生物多様性/調整サービス ~私たちにできること~
生物多様性/調整サービス ~私たちにできること~
生物多様性/生態系の多様性 ~私たちにできること~
これがなくては私たちの生活が始まらない、裏を返せばこれを守らないと生きていけない根幹となるサービスです。ともすれば、具体的なものの生産などの供給サービスや情緒豊かな景色を提供してくれる文化的サービス、災害などの安全が脅かされたときに強く意識する調整サービスなどに目が行きがちです。しかし、これらの生態系サービスを支える根幹の基盤サービスを損なうことは様々なことを失うという結果を招きかねません。
たてきくんとおばあちゃんのお話も残すところ後2回。楽しみにしていてくださいね。