new

第1回「いちごうとっけん」~確認申請/用途変更~|建築基準法改正を(辛口で甘めに)斬る!

2020-03-03
メインビジュアル

 改正建築基準法が平成30年6月27日付けで公布され、その一部は3か月施行(平成30年9月25日付け)で、残りの大部分が1年施行(令和元年6月25日付け)になりました。
(公布と施行の違いはこちら)

 公布の段階では法律しか見えてなかったのですが、施行になり施行令や告示が出て、改正の中身がはっきりと見えてきました。
 今回のシリーズは、そんな改正建築基準法のお話です。 
 法改正の全体概要はこちら (別添①) をご覧ください。

 まずは、法改正全体のイメージです。
 過去の法改正では、火災や地震により多くの犠牲者が出たことや、耐震偽装問題等への再発防止対策として、規制を厳しくしてきました。言うこと聞かん子は「鞭(ムチ)」でシバいたろか!って感じでした。
 今回の改正にあたっても大規模倉庫の火災や市街地火災への対策はあるのですが、結果として規制は緩くなっています。災害・事件・事故対策ではなく、既存建築ストックの活用や木材利用の拡大がメインテーマだからです。
「飴(あめ)」あげるから言うこと聞いて!って感じです。
 手続き規定では、インバウンドや東京オリンピック対策用の「緩めの縛り」もできました。「キツメの縛り」じゃないのが「お・も・て・な・し」です。
 いままでの法改正の流れは、こちら (別添②) をご覧ください。



今回の法改正の注目ランキング発表です!
「飴(あめ)」第1位
  「いちごうとっけん(一号特建)」の適用床面積が100㎡超えから200㎡超えに!

建築物の中でも「特殊建築物(とっけん)」は厳しい規制を受けます。
一口に「とっけん」と言ってますが、法的な位置付け(定義)には次の3つの区分があります。



①にじょうとっけん(2条特建)

 法第2条第二号に規定するもので、住宅や事務所以外のちょっと特殊な建築物はほとんどが「にじょうとっけん」になります。地方公共団体の条例制限附加の対象となる規定(法第40条)に使われています。



②べっぴょうとっけん(別表特建)

 法別表第1に掲げるもので、防火避難上特に注意が必要な建築物です。普通に「とっけん」と言うのは、この「べっぴょうとっけん」のことです。



③いちごうとっけん(一号特建)

 法第6条第1項第一号に規定する確認申請が必要なものです。 「べっぴょうとっけん」に供する床面積が200㎡超えの建築物です。とっけんの中でも最上位の三ツ星☆☆☆とっけんです。



図1.png

 今回の法改正では、この「いちごうとっけん」が、改正前は床面積が「100㎡超え」だったものが「200㎡超え」になりました。かなり、甘~い!
 これにより、一番の緩和になったのが用途変更(法第87条)の手続きです。
 既設建築物の既存用途を「いちごうとっけん」に用途変更する場合には、確認申請手続きが必要になります。例えば、マンションの1階にある喫茶店を止めてコンビニにする 場合にコンビニ用途床面積が100㎡超えだと確認申請が必要でしたが、法改正により200㎡までは確認申請が不要になりました。
 確認申請というハードルが無くなったことで、既設建築物の用途変更が容易に(お気軽に)できるようになりました。ラッキー!

iStock-961452318.jpg

  ただし、これは手続き規定だけの話ですので、実体規定については確認申請の有無にかかわらず、「べっぴょうとっけん」に適用になる耐火建築物制限(法第27条)や竪穴区画(法第36条、令第112条)をしなくてはいけません。
 ところがどっこい大作! これまた今回の法改正で「階数が3以下で延べ面積が200㎡未満(特定小規模特殊建築物)」のものに対する規制が大幅に緩和されました。
(「階」と「階数」の違いはこちら)

 ということで、床面積100㎡~200㎡の特殊建築物が今回の改正で一番大きい影響(緩和)を受けています。コンビニや牛丼屋さんでしょうか。  

次回は「飴(あめ)」第2位「しょうきぼとっけん(特定小規模特殊建築物)」を斬ります。



建築基準法監修:株式会社確認サービス